姿勢と呼吸を整えると、仕事はもちろん生活全てのパフォーマンスが上がると言われています。
マインドフルネスのお話しをする前に、まず姿勢と呼吸についてお話しします。
背筋を伸ばし、深い呼吸をするだけで脳のパフォーマンスが上がります。
現代人は、パソコンやスマホの使いすぎで猫背になってしまいがちですが、これでは自然と呼吸が浅くなってしまいます。浅い呼吸では脳にも体にも十分な酸素が行き届けにくくなってしまって、脳が疲れを感じやすくなってしまうそう。
呼吸そのものにとても意味があり、呼吸をするとき、息を吸うときは興奮や緊張状態にある時に優位となる交感神経が、吐くときはリラックスした状態にあるとき優位となる副交感神経が働いています。
ゆっくりと長く息をはくことで、副交感神経が優位になってリラックスした状態を生みやすくなる。
また、息をゆっくり吐くと体内に二酸化炭素が溜まってくる。そうすると幸せな気分をもたらす神経伝達物質、セロトニンの分泌が増えるのでストレスやイライラのないゆったりとした状態になれるという仕組みになっている。
呼吸と姿勢を整えるのは瞑想の基本動作になります。
瞑想というと宗教やスピリチュアルのものというイメージがありますが、科学的にも効果やメカニズムが研究されており、さまざまな効果が発見されています。
集中力や想像力、記憶力や意思決定などの仕事全体のパフォーマンスをあげる働きがあるので、ぜひ試してみてください。
瞑想には集中力や意思決定能力を鍛える「集中瞑想」とひらめきやすい脳を作る「観察瞑想」の2つがあります。この2つを解説していきます。
共通の瞑想の最初のステップは「調身」
姿勢を整えることです。
椅子に深く座り、両足を床につけ、両手を太ももの上に置いて軽くにぎる。背筋を伸ばしたら1度か肩をすくめるように上げて、一気に力を抜いて肩を落とします。
次ステップは「調息」
息を整えます。
5秒で鼻から息を吸い、10~15秒で鼻または口から吐く。
その後が「調心」
心を整えます。
「集中瞑想」は呼吸や眼の前にあるものなど、ひとつの対象に集中します。すると最初は集中できていても、次第に別のことが頭に浮かび注意力が散漫になるので、そこで再び対象に注意を戻します。これにより姿勢や呼吸が整い、乱れから心の状態を察知することができます。
「観察瞑想」は瞑想中の思考や感情をいちいち吟味せず、観察しながら受け流す方法です。「暑いな」「頭が痛いな」など自分の心に沸き上がることを脳内で実況中継するのも効果的です。思考に振り回されることなく客観視できるようになっていきます。
脳の扁桃体は怒りや恐怖に関係する部位ですが、活発になると感情が暴走しやすくなるホルモンが放出されます。瞑想を継続的に行った所、扁桃体が縮小したという研究結果があるので、感情のコントロールが瞑想でできるようになっていきます。
今回のテーマであるマインドフルネスは瞑想のトレーニングを応用したものになります。
「今この瞬間、経験していることに評価や判断をせず能動的に注意を向ける」というものです。
最近は、医療の分野での応用されるようになり、世界中注目されています。
瞑想というと特別なもののように感じるかもしれませんが、呼吸や姿勢、睡眠、食事といった日常の行動を一つ一つ改善することがマインドフルネスに生きるということになります。
ちなみにマインドフルネス的な1日の過ごし方で最も大事なのは、平日、休日問わず朝は決まった時間に起きて朝食を取るということ。
代謝を促進し、血糖値をあげて覚醒を促すコルチゾールを味方につけるとスッキリ起きることができます。
また朝食を抜いてしまうと、脳が飢餓の恐怖を感じてしまい、昼食時に大量のインスリンを分泌してしまうと、血糖値の急降下や肥満リスクを高めてしまうので、朝食抜きはおすすめしません。
マインドフルネスは元々ダライ・ラマ14世が瞑想を科学的に分析しようとしたことがきっかけで普及したそう。2000年代に入り、ビジネスの領域で一大ブームとなり、今に至ります。
現代は、ITの普及により、大量の情報を手に入れられるようになった反面、あまりに多くの情報を処理すると脳の負担が多くなり、自分の注意をコントロールできなくなってしまいます。そうすると、拡散思考が暴走し、集中できなくなったり、注意力が散漫になったりします。
そこに気がついたアメリカの企業等が創造的な仕事をするためのメンタルコントロールが重要だとし、自身だけではなく、社員にも教育が必要とのことで、社内教育用に導入する企業も増えていったというわけです。
瞑想は決して刺激があるものではありません。呼吸にしても普段は全く意識を向けていない呼吸というものにまず意識してみることが大切で、それを継続することで、「今日はいつもと違うな」という小さな変化に気がつくようになります。そのような弱い小さな刺激を感じていくことで、脳が鍛えられていくのです。
ボディスキャンというものがありますが、脳を鍛えることに非常に役立ちます。
頭⇨顔⇨首⇨背中⇨お腹⇨腰⇨右手⇨左手⇨右足⇨左足の流れで順番にその箇所に注意を向けるというものになります。体の感覚を研ぎ澄ますことで、コントロールがしやすくなるという効果があります。
脳は新しい変化を嫌うので、既にやっている習慣に付け加えてはじめるのがおすすめです。
お風呂に入る前に、ベッドに入る前にという具合に少しづつ習慣化していけば効果も感じやすいと思います。
マインドフルネスは、簡単に言うと自分を観察する方法になります。今、この瞬間の現実に目を向け、ありのままを知覚して、余計な思考や感情にとらわれないようにする。
「今、この瞬間」というのがポイントです。
余計な感情や思考が生まれる原因は過去か未来にしかないからです。例えば、過去なら「同僚に嫌味を言われてつらかった。昨日も自分だけがのけ者にされたからきっと嫌われているんだろう」と思い出して悩むこと、未来なら、「明日もきっとのけ者にされるから会社に行きたくない。いつまで続くのかな」と辛くなってします。
しかし、「今、この瞬間」にはそもそも、何も起きていない。「自分は、今歩いている。右足、左足と歩いている」と考えながら、自分の足裏に集中してみる。過去や未来のことを考えて余計な思考が生まれたら、「今、この瞬間」にまた戻ってくるようにしてみる。そうすると雑念がきて、集中力が生まれてくるようになります。
認知行動療法にも使われるようになっていて、うつ病の再発防止に効果があるとされているそう。
また、アンチエイジングにも効果があると言われています。
自分がストレス状態にあっても、心も体も「今、この瞬間」に立ち戻ってリフレッシュするマインドフルネスな生活を心がけていると、余計な怒りをずっと抱え込んだり、執着して苦しみ続けたりすることが減っていくのが実感できます。
余計なことを考えてしまっても心や体の痛みを感じたならそこで止めて、それ以上考えないようにすればいいのです。マインドフルネスな生活を維持していくためにも、掃除や庭いじりや皿洗いなど目の前のことに没頭する時間を持ってみるものいいと思います。
マインドフルネスは脳にも影響が大きく、10年以上もマインドフルネスを実践した人の脳を調べてみると、思考や創造性を担う前頭前野で容積が増えていたそう。
通常、人は加齢とともに前頭前野の厚みが薄くなっていくもの。しかし、マインドフルネスを実践し続けている人は、厚みはそのままキープされていたそう。これはアンチエイジングに多大な効果があると思って良さそうです。
そう言っても日常イライラすることも避けられないことだと思います。感情が乱れると呼吸も乱れてしまいますので、よりいっそう怒りが湧いてくるという仕組みになっています。
憂鬱な時に「はぁ〜」とため息が出たり、怒っている人をみると口がぱくぱくしていたりするのは、呼吸が乱れている証拠です。
逆にこういう時に、呼吸を意識して整えると怒りがおさまって落ち着いてきます。是非こういう時に行っていただきたいのが「3分間呼吸法」です。
腹式呼吸でゆっくり息を吸い、肺全体で吐き出すようにゆっくり息を吐く。
これを3分間くり返すだけです。
ポイントは、息の流れに意識を集中すること。
他のことを考えてしまっても、する呼吸に意識を戻すようにする。
そうすると、自然と落ち着きを取り戻すことができます。
このようにマインドフルネスというものは、生きる上でとても助けになってくれるものになりますので、まずは、呼吸に意識することから始めてみてはいかがでしょうか。
